ABCIとは
AI橋渡しクラウド(AI Bridging Cloud Infrastructure、ABCI) は、国立研究開発法人 産業技術総合研究所が構築し、株式会社AIST Solutionsが運用する、AI技術開発・橋渡しのためのオープンな計算インフラストラクチャです。ABCIは、2018年8月に本格運用を開始し、2021年5月にABCI 2.0、2025年1月にABCI 3.0にそれぞれアップグレードされる予定です。
国内最大級・超省電力・オープンAIインフラストラクチャ
ABCIは、経済産業省「人工知能に関するグローバル研究拠点整備事業」(H28二次補正)の一環として、国立研究開発法人 産業技術総合研究所が柏センター(東京大学柏IIキャンパス内)にスクラッチから整備しました。その後、「人工知能に関する橋渡しインフラ拡張」(R1補正)、「生成AIの基盤的な開発力強化に資する計算資源の整備」(R5補正)の支援を受け、計算資源の拡充を行っています。
ABCIは、我が国における産学官によるAI研究開発を加速するオープンイノベーションプラットフォームとして、国内最大級の計算能力を活用したAI技術の研究開発・実証、社会実装の推進、AI分野の最重要課題への挑戦を目的としています。
ABCIでは、特に生成AIに関する基盤的な研究力・開発力を国内に醸成する必要性から、2023年度より生成AI開発加速のために重点的に計算リソースを配分してきました。2024年度以降は生成AIモデルをはじめとした最先端AI技術の研究開発能力の強化のため、国内の産学官、特に国研等による公的利用を中心に計算リソースを提供していきます。
ABCIの主な特長
スクラッチから超高密度・超省電力データセンターを設計
低コストで軽量な「倉庫」を作り、その中に「やぐら」を組む二重構造を設計し、通常のデータセンタの数倍の熱密度を実現しました。 冷却には、スパコン向けの冷却システムの民生利用を図っています。温水冷却と空冷の併用により、ラックあたり70kWの冷却を可能にするとともに、冷却に要する電力を大幅に削減しています。結果的に運用コストの圧縮にもつながっています。
デファクトスタンダードアーキテクチャを採用
コモディティ(汎用製品)のハードウェア、とりわけAI開発においてはデファクトスタンダードであるAIアクセラレータ、を一貫して整備・提供しています。民間クラウド事業者等が模倣しやすく、利用者にとっても費用対効果に優れた設計をとっています。
ソフトウェアエコシステムの活用
ソフトウェア環境としては、最先端のミドルウェアや並列化コンパイラ、最新のAIアクセラレータ向け開発環境やディープラーニング向けツール類がそろった開発・実行環境を提供しています。 また、ソフトウェアエコシステムを活用した効率的なAI開発を可能にするため、コンテナ環境をABCIサービス当初より提供しています。ABCIに最適化されたコンテナをはじめ、グローバルコミュニティで開発されたさまざまなソフトウェア資産の利用が可能となっています。
ABCIはウェブブラウザから利用することができます。 Open OnDemandを使用することで、ウェブブラウザ上でのコンソール操作やファイル操作、Jupyter Lab等のウェブアプリケーションの利用が可能になります。
ABCIで提供しているソフトウェアについては、ABCIユーザーガイドで確認できます。
データの安全な活用の促進
AIの開発・活用にはデータが極めて重要であることから、ABCIではマルチペタバイトスケールの高速ストレージやデータの共有・公開向けデータ基盤を提供しています。通信路とデータをクラウドのデファクトスタンダード技術を使って暗号化することも可能となっています。 この他、利用者のデータや学習済みモデルをカタログ化する「ABCIデータセット」という試みを推進しています。